“自然治癒力”否定論 ?
「自然治癒力を高める○○」。近頃やたらとそういった広告が目に付く。その○○に入るのは、健康食品、サプリメント、運動など健康産業の商品・サービスである。
そもそも、自然治癒力とは「自然に治癒する力」のことであろう。人為によって高めなければ治癒しないならば“自然治癒力”じゃないではないか。健康食品、自然食品、サプリメントを摂らなくても、また運動をしなくても、何もしなくても“治る”から「自然治癒力」じゃないか。どんな人間にも備わっている病を治す力を「自然治癒力」というのではないか。
「自然治癒力を高める○○」といった広告が増えたのは、たとえば「ガンに効く○○」といった広告をすると法律違反となり、捕まってしまうようになったけれど、「自然治癒力」なら曖昧なものであり逮捕されることはない。そのため現在、世間より注目されている「自然治癒力」という言葉を使っているというのが現状であろう。
ぼくが、なぜ、この傾向についてあえて批判するのかというと、患者が「自然治癒力を高める○○」という言葉を目にしすぎると、「自然治癒力というのは高めなければ働かない」と思ってしまうのではないかと懸念するからだ。「自然治癒力」というのは、体が弱い人でも、病気の人でも、体力がない人でも、お金がなくて健康食品を利用できない人でも、なんらかの理由で運動ができない人でも、どんな人にでもそれなりに備わっているものである。何度もいうように、だから「自然治癒力」なのである。
確かに、その人の健康状態などによって「自然治癒力」が高い低いはあるであろう。それに「自然治癒力」が弱い人は、高めるためのなんらかのアクションをした方がいいかもしれない。だからといって、“○○”等によって高めなければ働かないというものではないのである。そうだとしたら「自然治癒力」じゃないのである。いかに体が弱かろうがお金がなくて何も利用できなかろうが「あなたの心と体には自然治癒力が備わっている。だから心配しなくてもいいんだよ」と励ますことができるのが「自然治癒力」なのである。
「自然治癒力を高める○○」という広告の背後には、「○○などによって高めなければ自然治癒力は働かず病は治らないんだよ」というキャッチ・コピーが秘められている。なぜならば、「○○を使わなくても自然治癒力が働く」ならば○○が売れないから。
この文のタイトル「“自然治癒力”否定論」は、正確に言えば、「コマーシャリズムの中で安易に使われている“自然治癒力”という言葉の否定論」なのである。
by モモタロウ(写真/文)
The comments to this entry are closed.
Comments