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November 18, 2006

たった一人の葬式   (金)(土)

彼は死んだ。古い団地の一室で、年老いた妻だけに看取られ、畳の上の真白い布団の上で死んでいった。金はない。だから、葬式は出せない。市と契約している葬儀屋に頼んで、通夜も葬儀もせず、ただ火葬をしてもらうだけ。葬式を出せたとしても、参列する客はほとんどいなかったであろう。

「棺を蓋いて事定まる」という。その言葉が取り上げられるのが、大勢の参列者に囲まれて通夜葬儀が行われたき。これも故人の人徳だと褒め称えられる。しかし、死んでも葬式に誰も来ない人生もあるのだ。そうした人生はまったく意味がないものだったのだ・・・誰がいえよう。

 古く壁が変色し、ひびが入った団地の階段を、黒い服を着た葬儀屋の男2人にタンカーに乗せられ、階下へとおりていく。霊柩車ではなく、ほこりっぽい濃紺のワゴン車へと遺体は運び込まれた。妻の哀しみをこらえる、しわだらけの顔だけが有機物として存在しているかのようだった。

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