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November 27, 2006

衰えを受け入れること

アンチエイジング・ブーム

アンチエイジングは美容界、健康ビジネス、医療界で大きなマーケットとなっているようです。

 アンチエイジングすなわち抗加齢・・・。でも、加齢に抗っているだけでは、幸せになれないのではないか、幸せからどんどん離れてしまうのではないかと心配してしまいます。

自分のありのままを受け入れる

そもそも人間が幸せになるための第一歩は「ありのままの自分を受け入れる」ということではないでしょうか。背が低い、顔の造作が整っていない、太る体質、手足が短い・・・、こうした目に見えることだけではなく、なにをやるのものろい、いつもどこかが抜けている、軽薄である・・・、また性格が暗いといわれる、くよくよとしてしまう、細かいことに気がいかない・・・などなど、一見マイナスと感じてしまうような自分というものも、現実なんだから受け入れる、ということから、ほんとうの幸せは始まるのではないかと信じるのです。

そうした自分なんだけど、他の人にはないこんな良さがあるとか、欠点と思われることも裏返せば長所だったとか、そういうことに気づいていくことこそ、その人間を生かし、人生100年なら100年を生き抜いていく力を与えるのだと思います。

老いを受け入れないと老いる?

その意味で、アンチエイジング-抗加齢という言葉を文字通り受け取ってしまうと、加齢によって、体力も、容貌も衰える、そして、いずれは自分の体は朽ち果て、土に帰っていくのだという事実を認めないことにもなりかねません。でも、それは厳然とした現実として、どんな人からも離れず、くっついているものなのです。それを認めないと心の中に現実と理想との乖離のために葛藤が生まれる。そのストレスが、より老化を促進するということにもなりかねません

だから、まずは、人間は誰でも年を取るということを認めなければならないのではないでしょうか。それにともない容貌というものも、土に向かって衰えていく・・・。そうしたことをすんなりと認めた上で、少しでも若返ろう、いつまでもできるだけ健康でいよう、と努力する、それが大切だと思うのです。少しでも衰えることを防ぐことは尊いことですが、まずは「“老いる”ということを受け入れる」ことは欠かせないことなのです。

1つの力が衰えると他の力が伸びてくる

これに関して、PHP 12月号でアテネ五輪アーチェリー銀メダリストの山本博さんがこんなことを語っていました。

30代の後半になり視力が落ちてきたのです。これまでハッキリ見えていた的がぼやけてきて、照準が思うように定まらない。当然体力も若い選手には敵わなくなる。でもメダリストだというプライドはあって、焦燥感ばかりがつのっていました。

―そのトンネルから抜け出されたきっかけは何だったのですか? 

 自分の中で考え方を変えたのです。年齢とともに視力が落ちてくる。そんなことは当たり前で、それを嘆いていても仕方がない。自分の視力の衰えを受け入れた上で、やるべき練習を行うしかないと。

 すると人間の力とは不思議なもので、1つの力が衰えると、それをカバーするように別の力が伸びてくるのです。心の目と言えば大げさかもしれませんが、練習を続けううちに、そういう力が備わってくるのを感じました。事実、ハッキリと的が見えていた20代よりも、的中率が上がってきたのです。

 

最後に、佐藤一斎『言志耋録』より、以下の言葉をご紹介いたします。

心志を養うは、養の最なり。体軀を養うは、養の中なり。口腹を養うは、養の下なり。

―心を養う(精神修養)のが養生の最上策であり、体を養うのは養生の中策で、口や腹を養うのは養生の下策である。

 

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