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December 18, 2006

なにものにも帰属せず、寒風に身をさらせよ

 朝日新聞1218日夕刊「思想の言葉で読む21世紀論」にパレスチナ生まれの英文学者エドワード・サイードの事が出ている。ぼくはこの人のことをよく知らないが感銘を受けた。

『知識人とは何か』(平凡社)など多くの翻訳を手がけた英文学者の大橋洋一氏は、サイードが好んだ「冬の精神」という言葉に注目する。

 春が近づく気配を感じながら、希望の季節をただ待ち続けるだけでなく、あえて寒風に身をさらす。「いまが困難な時代だからこそ、厳しい冬の精神を持たなければならないとサイードは考えた。晩年になると伝統やナショナリズムに回帰する知識人が多いが、彼は最後まで何かに帰属して温かく包まれる生き方と無縁だった」と大橋氏は言う。

 自分が属する共同体の慣れ親しんだ空気に包まれて暮らしたい。人はそう思う。国や民族だけではない。何かの組織や集団に強い帰属意識を抱き、その一員として生きることは安逸につながる。

 だが、いつも仲間に合わせて気を配り、集団で思考する生き方からは新しいものは見えない。心地よいものの境界を越えて冬の精神を持て、とサイードは説き続けた。

 なにものにも帰属しないで生きることがいかに厳しいことか。しかし、そうすることでしか生まれてこない価値もそこから生み出すことができる。

今日は雲ひとつない青空だったが、北風が身にしみる一日だった・・・。

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