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July 10, 2008

おまえは地球の一部じゃない?

星空を観察していたタロウに、

火星が声をかける。

今晩の火星は

まるで

夜空を見上げる

タロウの目の前にいるような

異様な輝きを見せている。

「おい、タロウ!おまえは、

地球とばっかり付き合ってないで、

たまには、俺とも付き合え!」

タロウはこたえる。

「なにをおっしゃる火星さん、

ぼくは地球の一部ですよ。

ガイアというじゃないですか。

地球と人間は一体なんです」

「タロウ、なにをいう!

おまえは、地球の一部であるように

思ってるかもしれないが、

宇宙の一部でもあるんだぞ。

それは、わしらすべての

惑星、恒星といっしょ。

もちろん、地球だって

まったくかわりはない。

わしら星はもちろん、

あらゆる物質・生物は、

つまり存在は、独立している。

それとともに、

宇宙、いやもっと広い世界

の一部でもある。

つまり、地球とおまえは

対等なんだ。

おまえは、地球の一部であるように

みえて、そうではない。

おまえから見て、

火星のわしと地球、

その他のあらゆる星すべてが

星のひとつにすぎない。

地球とわしら他の星の

違いはおまえから

物理的に近いか

遠いかの違いにすぎない。

だから、おまえが

地球の一部だっていうのは、

一見、正しいように見えるが、

それは一定の見方に過ぎない」

「でも、火星さん、

人間が地球の一部だって認識が

できたからこそ、

地球を大切にしなくちゃ、

みんなで守ろうという

機運が盛り上がっているん

じゃないですか」

「ははは。それで、ほんとうに

地球の環境というものが

守れているかね。

年々、状態は悪くなっているではないか。

緑色が消え、ブルーの輝きが

あせてきているのが、この

火星から見てもよくわかるぞ」

「そういわれてみれば、

そうでしょうが・・・」

「タロウ、おまえは、

地球の一部だってことだけに

固執するから、

地球に甘えているのではないか。

地球は地球、おまえはおまえ、

そういう気概があってこそ、

おまえは、相棒である地球を

大切にしようって本気になれる

んじゃないか」

「でも、自分が地球と対等だなんて、

とても傲慢なような気がします」

「もちろん、自分が地球の一部だ、

ちっぽけな存在なんだということは

一面の見方であり、

一部の真実であろう。

しかし、地球ってなんなんだ、

惑星ってなんなんだ、

恒星ってなんなんだ。

そんなことは人間には

ほんとうにはわかっちゃいない。

それならば、

もっともっと自分の

概念を広げたらどうだ。

広大無辺、

広げられるだけ広げた

世界の中のおまえは一部なんだ。

その中心におまえがいる。

その世界の中でおまえは

ほんの一点であるけど、

ど真ん中に突っ立っている。

そして、そのおまえの

周りをあらゆるものが

廻っているんだ。

その中の1つに地球というものがある。

火星もある、水星もある太陽もある、

月もある…

星ばかりじゃない、

鉛筆もあれば筆箱もある、

テレビもある、ゲームもある、

おまえのお父さんもお母さんも、

友達も、全然しらない人間たちもいる、

熱帯雨林の動物も

サバンナの動物も植物も、昆虫もいる。

すべては、おまえが存在している以上、

おまえが中心なんだ」

「なんだか、わかったような、

わかっていないような…」

「わからなくていい、

ただおまえが、地球の一部にしか

過ぎないんだという

卑屈な見方だけに執着するのは

やめてほしい。

おまえが生まれるずっと前に、

同じく地球のどこかの国で

死んだシャカという人間が

いっていたろう。

“天上天下唯我独尊”って

あの意味は、

よくは知らんが

ワシが今、

言ったことに近いのかもしれんな」

「そうですか…。

でも、ぼくはそのお釈迦様の

言葉を知らないんで…」

「そうか。それはどうでもいい。

とにかく、おまえは、

今日から、

単なる地球の一部じゃなくて、

地球とのパートナーでもある。

そして、わしら他の惑星とも

つきあえることができる。

そう意識をかえさえすればいいんだ。

すべては、この世をどうとらえるかに

かかっているからな。

それでは…」

「火星さん、もう帰ってしまうんですか?」

「そうだ。

というわけで今後もよろしくな」

夜空に異様な輝きで存在感を

しめしていた火星が、

急にいつもの光にかわった。

タロウは少しほっとした

気持になって

窓のところでユラユラと

揺れる

カーテンの中へと入っていった。

               (終わり)

                                           

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