どろどろを表現したい②
(前回よりの続き)
十数年間放送作家として息をさせていただいていたテレビの世界だが、かつてと同様な行き方で仕事に戻りたくないと思っている。今まで自分でも気づかずにテレビの視聴率至上主義や自分の体調や人間関係のせいにしてきたが、ほんとうは「どろどろ」がテレビでは表現しにくいというただそれだけではなかったのか。スポンサーや視聴率、局といったいうなればビジネスのフィルターによって浄化され「私のどろどろ」でなくなるどころか、ろ過されてスカスカに消されてしまうことに堪えられなかったのかもしれない。
こうみると視聴率を上げるために、見る人を驚かすばかりで、ほんとうのことが伝わりにくいテレビというマスメディアも悪い面ばかりではないのである。どの世界もそうだろうが、番組の制作者にはどろどろを抱えた人がいっぱいいて、そんなものが公共の電波にあふれかえったら見る方はたまったものではないだろう。数えるほどしかないチャンネルは、視聴者の選択権が極端に狭められているのだ。
(次回へ続く)
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