之を楽しむ者に如かず①
中野孝次(作家、故人)は、『論語』の
子の曰く、
之を知る者は之を好む者に如かず。
之を好む者は之を楽しむ者に如かず。
を解説して、こう書いている。
(前略)
わたしはどんな仕事でもそうだろうと思う。人はともかく何かに惚れること、自分が好きな事柄にのめりこみ、打ち込み、探求し、夢中になってそこに深入りするのでなければ、どんなことにでも上達できない。だがそれだけではまだ足らず、自分のすることが好きで、それをやるのが楽しくてならず、それに生涯を捧げ、それを天職とするくらいにまでいかなければ、そのことの第一人者にはなれないのだろう。
(中略)
天職となるまでにあることが好きになるとは、自分がその中に入って毎日毎日新しい境地を研究し、深入りし、自分の研究以外に何も気にならなくなる。仕事の中での工夫や、新しい試みや、自分だけが知るよろこびや、それがすべてになるということだ。そこに他人の評価の入る余地はない。よろこびや悲しみも、人生のすべてがその中にあり、他は気にならなくなるところまでゆくことだ。そうなって初めて第一流の者になる。
(後略)
(中野孝次著『幸福になるための言葉45』より)
(次回へつづく)
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