生涯、在野の文人を貫き通した三宅雪嶺
三宅雪嶺に関して一枚の写真があるそうです。東京大学総理謝恩会時における記念写真なのに青年、三宅雄二郎(のちの雪嶺)は、教授、学生たちから離れ、一人超然として木に登っているのだそうです。
それに対して、伝記作家の小島直記はこう書いています。
若者らしい茶目っ気の現われでしょう。しかし東大出身者らしい体制派エリートとしての道を自ら選択せず、官権、顕職を拒否して生涯無冠、在野の文人として生き抜いた異端の姿勢が、はからずもここに象徴されているように思われます。(※傍線は筆者)
明治時代、多くが官僚になって立身出世を目指す文明開化の時代です。にもかかわらず、東京大学ではたった一人の哲学科学生として、図書館に通って和漢書や仏書をむさぼるように濫読したといいます。
小島直記はまた、こうも書いています。
(前略)官僚になるのがいやで政治理財専攻をしなかったというだけであって、政治そのものへの関心がなかったということではない。在野の立場で政治を論ずる言論人、それが彼の人生を貫く一本の太い路線であった。そこに雪嶺の「立志」の特色があったのです。
(※傍線は筆者)
こうして若い時代に立てた志を生涯貫き通しました。これだけ読んでも、三宅雪嶺はじつに魅力的な人物です。雪嶺の代表的著作『同時代史』にいつかはチャレンジしてみたい、ますますそう思います。
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